はじめまして、大保協商事株式会社で専属ソムリエをさせていただいております渡邉と申します。今回のテーマは初夏の楽しみの一つ「鮎」とフランスの高級スパークリングワイン「シャンパーニュ」です。新緑の中、清流に身を躍らせる若鮎の姿は美しく、古くは日本書紀などにも登場し将軍家や皇室への献上品とされてきました。川底の苔を食べて育った鮎は独特の香気をまとい「香魚」とも言われます。シャンパーニュは地下数十メートルに渡って真っ白なチョークが埋め尽くす白亜の土壌にはほどよい保水力とミネラルの源が凝縮されており、一本筋の通った骨格を備え、立ち上る泡の美しさ、香り立つ香気が他に類を見ない味わいを生み出します。
さて鮎と言えば塩焼きも良いですが今回ご紹介するのは二つの大阪の銘店のお料理です。どちらもシャンパーニュと相性が抜群でありながら全くの個性の違いを感じることが出来ます。
1店舗目は大阪らしく、串揚げの銘店「六覺燈」の「鮎の串揚げ」です。さくっとした衣にふわふわとした繊細な白身、蓼(たで)のソースの優しい苦みがアクセントとなっています。シンプルだからこそ素材の良さが光る逸品です。
2店舗目は私の古巣でもあるフランス料理店「ラ・ ベカス」の「鮎のリエットとヴィシソワーズ」。1匹の鮎を丸々、その苦みも 全てエッセンスとして仕上げたリエットをジャガイモのスープ「ヴィシソワーズ」に浮かべています。このお料理は渋谷シェフのスペシャリテで、今や日本中のシェフ がこのお料理をオマージュして表現されています。鮎の苦みとヴィシソワーズの甘さ、フレッシュの蓼をハーブのように添えた夏の定番です。
株式会社T&Cサービス 取締役営業統括 渡邉圭一 ソムリエ、利酒師
※組合ニュースの連載コラム「酒々楽々」からの転載です。